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日暮れて四方は暗く

# フォロワーさんに要素をもらって自分を聖職者化する というタグで作ったキャラクターの小話です。 下記の要素をいただいていました。 ・顔に聖書の言葉 ・罪を償う為の自傷行為が行われる ・常に目を伏せてor閉じている・武器を隠し持っている...

六歳三ヶ月ののセドリック・ジョルダン

(子盗り騙りのセドリック・ジョルダン 後日譚) 「セドリック・ジョルダン?」 その呼びかけに応えて、蓬髪の青年が顔を上げた。ふわふわとした金髪を鬱陶しげに撫でつけて、濃い隈の浮いた四白眼が睨め付ける。偽物"鳥籠ジャック"の騒ぎの翌日であったし、昨夜に限って一際根気強かった警...

子盗り騙りのセドリック・ジョルダン

「"鳥籠ジャック"がさあ……。」 「ウォーターハウスの件だろ。娘さんの。前なら、子どもはすぐ帰ってきたのにな……。」 一階下のアパートメントの話し声を耳にして、屋上を行く青年が眉をしかめた。僕じゃない、と呟きながら、尖ったヒールで屋根瓦を力任せに踏み砕く。...

畸玩堂のワルツ

お二方は、と問われて顔を見合わせた。 片や、色とりどりの染め具を頭から被ったようなまだらの長い白髪の青年。片や、それより拳一つぶん背の高い猫背の青年。ふたりともドレスコードたる黒の燕尾服を纏いながらも場にそぐわない立ち姿ゆえ、壁の花に徹していたのだ。そもそもは「悪い虫がつか...

榊繁道の変わり小太刀

「重い鉄扉が閉まるのを見届けて、ぼくは絶望的な気分になった。目の前が真っ暗になるというのはまさにこの事。目は見えていたが、周りの景色なんてこれっぽっちも入ってこなかったんだ。」 壁にもたれた青年が朗らかに笑った。所々ひび割れてざらつくコンクリートの床に腰を下ろして、手足を投...

読めば三文字語れば五文字

@Tw300ss様の企画する #Twitter300字ss として掲載したもの。 2021/7/3のもので、お題は「答える」でした。 Twitter300字ssの概要は下記の通りです。 https://privatter.net/p/310549...

美術衛士バベット嬢の冒険 骸画材の掌編

娘が衰えてゆくのです。 母親の言う通り、その娘はひどく弱っていた。 痩せ衰えた長病人の様相ではない。けれど顔は蝋の白さで、病床から身を起こしはすれど、頭痛を堪えるように目を瞑っている。 シーツの上に重ねた指も青白く、時折小刻みに痙攣するのが見てとれた。...

影踏みの城

@Tw300ss様の企画する #Twitter300字ss として掲載したもの。 2021/6/5のもので、お題は「影」でした。 Twitter300字ssの概要は下記の通りです。 https://privatter.net/p/310549 298文字...

4階押したのお前か?

カレーの好きな人が甘口って言うのと同程度の怖い話。 あるビルの話だ。 ここの上階は幾つかの企業が借りているのだが、どこに勤めても、新人は何より先にこう言われるという。 「エレベーターに乗ったら、なんでも正直に答えろよ」 首を傾げたくなる話である。...

地蜘の夢 4(完結)

騎士隊長グリゾディアブラ 昔、姫君を喪った国がある。 森の大穴の蜘蛛に魅入られたのだ。 大穴の蜘蛛は貪欲で、食事や娯楽、愛妾にまでも小国の宮廷ほどの価値を求めた。 それゆえ森や近隣の国々を襲うことも多く、 膂力、糸、爪、牙、そして毒のゆえに、所望されたのが家畜や衣服、あるい...

地蜘の夢 3

楽士エルーナゼメンア 昔、姫君を喪った国がある。 森の大穴の蜘蛛に囚われたのだ。 大穴の蜘蛛は色を好み、これまでも娘たちを捕らえ、囲い込んでいた。 大穴の主を討った騎士は、その噂の通りに、深い穴の底にいくつもの亡骸を見たという。...

地蜘の夢 2

道化師レーミニアブラハとミレーニアブラハ 昔、姫君を喪った国がある。 森の大穴の蜘蛛に奪われたのだ。 大穴の主はともかく、その子蜘蛛たちもひどく手強く、姫君を取り戻さんと送った精鋭はそのまま彼らの腹に収まった。 償いのため王家に下ったとき、それゆえ当代の王はこう命じたという...

地蜘の夢 1

道化師シエラレバンナス 昔、姫君を喪った国がある。 森の大穴の蜘蛛の毒気で喪ったのだ。 大穴の主は共に死んだが、子蜘蛛たちが後に残った。そうして彼らは償いのため、代々国に、王家に仕えることになった。 それが今代の白淵騎士団の起こりであり、その長こそ子蜘蛛の裔である。...

射手辺の遠眼鏡(珈琲の超短編版)

イベント「異形と超短編」に際しての"珈琲"をテーマとした超短編の公募に応募させていただいたお話です。 一つ前の投稿で書いた「射手辺の遠眼鏡」については、これを書き終えた後もシャズベの口が閉じなかったので書き切りました。 「いけない。」 低い声が少女を制した。...

射手辺の遠眼鏡

射手辺の遠眼鏡(シャズベのとおめがね) 「異形と超短編」というイベントにお願いします!!ドゥーーン!!!!ってしたののフルサイズ。テーマは『珈琲』でした。 若い女性が窓辺の席に座っていた。硝子越しの雑踏と手にした携帯とに、何度も落ちつかなげに視線をさまよわせている。呼吸はひ...

睡魔ドロワーユ

夢をみたのだという。誰かに抱かれて眠り続ける夢を。五日に渡って眠り続けていた少女は、遠く、窓の外に目を向けながら、そう言った。 「初め、私は誰かに運ばれていたんです。誰かに抱かれて、一歩ごとに揺れるのがとても 心地良かった」...

白木の森の魔女と息子

魔女集会で会いましょう 森の人食い魔女/醜い捨て子 赤茶けたものがうごめいていた。棒のような手足が、蔦で編んだ籠から出て、しきりに空を掻いている。 これはご馳走だね、と笑ったのは、通りがかった魔女である。森の奥に住み、迷った木こりや捨て子の類いを食べてしまうことで知られた女...

菫の獄吏 1

見えない目でも、彼女を探した。 顔はもうじき溶け落ちただろう。醜さを捨てた今の獄吏なら、婚姻の承諾が貰えるはずだった。耳鼻も焼け溶けて、今は声も香りも辿りようはない。けれど、一つ、二つ、穴でも開ければ、元どおりに感じ取れよう。...

クロークマン

こんな噂を思い出した。 …入退場口のクロークで66番に荷物を預けると、自分のものじゃない荷物が混ざっていることがある。その荷物を持ち帰ってしまうと、"クロークマン"が訪ねてきてしまう。"クロークマン"は自分の荷物を渡すように言ってくるが、その時に決して顔を見てはいけない。顔...

菫の獄吏 2

ある女もそうだった。考えてみるから助けてほしいの一点張りで、そんな気はないのだと、獄吏にははなから分かってしまった。それを告げれば、凄まじい顔をして、何事かを吐き捨てる。獄吏にはどこの言葉とも知れないが、意味だけはよく分かった。きっと呪いの文句でこそあれ、許しを請うそれでは...

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