日暮れて四方は暗く
# フォロワーさんに要素をもらって自分を聖職者化する というタグで作ったキャラクターの小話です。 下記の要素をいただいていました。 ・顔に聖書の言葉 ・罪を償う為の自傷行為が行われる ・常に目を伏せてor閉じている・武器を隠し持っている...
(子盗り騙りのセドリック・ジョルダン 後日譚) 「セドリック・ジョルダン?」 その呼びかけに応えて、蓬髪の青年が顔を上げた。ふわふわとした金髪を鬱陶しげに撫でつけて、濃い隈の浮いた四白眼が睨め付ける。偽物"鳥籠ジャック"の騒ぎの翌日であったし、昨夜に限って一際根気強かった警...
「"鳥籠ジャック"がさあ……。」 「ウォーターハウスの件だろ。娘さんの。前なら、子どもはすぐ帰ってきたのにな……。」 一階下のアパートメントの話し声を耳にして、屋上を行く青年が眉をしかめた。僕じゃない、と呟きながら、尖ったヒールで屋根瓦を力任せに踏み砕く。...
「重い鉄扉が閉まるのを見届けて、ぼくは絶望的な気分になった。目の前が真っ暗になるというのはまさにこの事。目は見えていたが、周りの景色なんてこれっぽっちも入ってこなかったんだ。」 壁にもたれた青年が朗らかに笑った。所々ひび割れてざらつくコンクリートの床に腰を下ろして、手足を投...
@Tw300ss様の企画する #Twitter300字ss として掲載したもの。 2021/7/3のもので、お題は「答える」でした。 Twitter300字ssの概要は下記の通りです。 https://privatter.net/p/310549...
娘が衰えてゆくのです。 母親の言う通り、その娘はひどく弱っていた。 痩せ衰えた長病人の様相ではない。けれど顔は蝋の白さで、病床から身を起こしはすれど、頭痛を堪えるように目を瞑っている。 シーツの上に重ねた指も青白く、時折小刻みに痙攣するのが見てとれた。...
カレーの好きな人が甘口って言うのと同程度の怖い話。 あるビルの話だ。 ここの上階は幾つかの企業が借りているのだが、どこに勤めても、新人は何より先にこう言われるという。 「エレベーターに乗ったら、なんでも正直に答えろよ」 首を傾げたくなる話である。...
騎士隊長グリゾディアブラ 昔、姫君を喪った国がある。 森の大穴の蜘蛛に魅入られたのだ。 大穴の蜘蛛は貪欲で、食事や娯楽、愛妾にまでも小国の宮廷ほどの価値を求めた。 それゆえ森や近隣の国々を襲うことも多く、 膂力、糸、爪、牙、そして毒のゆえに、所望されたのが家畜や衣服、あるい...
イベント「異形と超短編」に際しての"珈琲"をテーマとした超短編の公募に応募させていただいたお話です。 一つ前の投稿で書いた「射手辺の遠眼鏡」については、これを書き終えた後もシャズベの口が閉じなかったので書き切りました。 「いけない。」 低い声が少女を制した。...
魔女集会で会いましょう 森の人食い魔女/醜い捨て子 赤茶けたものがうごめいていた。棒のような手足が、蔦で編んだ籠から出て、しきりに空を掻いている。 これはご馳走だね、と笑ったのは、通りがかった魔女である。森の奥に住み、迷った木こりや捨て子の類いを食べてしまうことで知られた女...