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Gasp Hollow 11

広間の先は一本道の水道で、はぐれの悪夢すらいない長い道を、サラは一人進んでいった。その果てには狭い煉瓦の螺旋階段が待っていて、それを上がれば、やっと地上に出るのだった。とはいえ、それがどの辺りかは分からない。橋は近くに見えているけれど、路地二つか三つ分くらいは離れたところに...

Gasp hollow 10

そう、溺死体。顔ばかりが白く美しく、しかし、胴体は水を含んで膨れ、弛んだ、下半身に魚の尾を持つ巨人の死体。けれど、否。そうではなかった。近寄ったその瞬間、"それ"の目がぎょろりと動いて、サラを見た。これもまた、悪夢の一形態だろうか。そう思ったのを否定するように、"それ"の腹...

Gasp Hollow 8

しばらくこの辺りで刈りとりを続ける、そう言うキャロラインとは橋で別れて、サラはジリアンの家をまた訪れていた。大通りの悪夢の残党を刈りとりがてら…苗床を倒して気が大きくなってもいたものだから…この後どこへ行くべきか、昨晩の自分はどうしていたのか、助言を仰ごうと思ったのだ。...

Gasp Hollow 7

「そろそろ、苗床と戦った頃だろう」 待っていたのだろうか。月の塔に戻ったサラの目の前で、バイロンが口を開いた。 「その様子では、手強い相手だったようだ」 どこか満足げに頷いて、バイロンがガゼボへ手招く。大人しく従えば、ガゼボでは、やはり、あの少女が待っていた。けれど、今回は...

Gasp Hollow 6

悪夢の槍が脚を貫き、よろけた体を別の悪夢に深く切り裂かれて、サラは意識を失った。 そうしてまた、月見の塔の燈火の元で目を覚ます。何十度目の死だったか、もう数えてなどいない。強行突破には悪夢の数が多過ぎたのだと反省し、また、サラは旧市街へと戻った。...

Gasp hollow 5

サラは再び、ジリアンの家の前に立っていた。窓には未だ、ほのかに明かりが浮かんでいるのが見える。また、応えてくれるだろうか。そう思いながら彼女を呼べば、思ったより近くから返事が聞こえた。 穏やかな声に安堵するのは、初めて会った人物に刷り込むようなものなのか、それとも、昨晩親し...

Gasp Hollow 4

まだ、サラの混乱がほどけたわけではない。けれどやるべきことがあるなら、そしてそれが昨晩も自分がやっていたことだというなら、とりあえずそうしてみよう。そう思えるだけの、自棄に似た冷静さは取り戻していた。当座の決意を固めたサラの目の焦点が段々合ってくる。その様子に満足げに頷いて...

Gasp Hollow 3

「私を知っているの」 からからに渇いた口をなんとか動かして、サラが言った。どことも知れない街の、聞き覚えのない声の主が、自身すら定かでない“私”を知っていると言う。思わず手を伸ばした窓の中で、曇り硝子ごしに、人影もまた身を乗り出した。...

Gasp Hollow 2

ふと、目が覚めた。辺りは真っ暗で、天井がうっすらと見えるばかり。気配を感じて横に眼を向ければ、何者かがこちらの様子を伺っていた。それが何かと認める前に、頭が冷える。これはいけないものだ、触れては、触れられては、ならない。けれど、触手のような黒い手が、蛇に似た黒い軀が迫る。未...

Gasp Hollow 1

目覚めはやはり、診察台の上だった。けれど今、彼女を照らすのは眩しい朝日であり、立ち込めるのは、清潔さを際立たせる消毒剤の香りだ。お目覚めですか、と声をかけてくる看護婦も、おそらくは馴染みの方なのだろう。脈や体温の計測は問題なく、無事に"治療"は終わったようにみえる。先生をお...

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